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採用枠にこだわるのは不毛だ [雇用]

働いている聴覚障害者の間では、時おり、障害者枠、一般枠のどちらで採用されたかということが話題に上がる。
「障害者枠で採用されたのか」という質問を受けた途端に、顔色を変えて「私は一般枠で採用された」と怒り出す人も少なからずいる。
一般枠で採用された聴覚障害者は優秀で、障害者枠で採用された聴覚障害者は優秀でないという図式が多くの人の頭のなかにできあがっているように思う。
聴覚障害者はプライベートでつながっている他の同障者がどれ位の能力を持っているかについてやたらと詳しい人が多いので、同障者で構築する地域コミュニティの場においても、「一般枠で採用された」ことはそれ自体一流大学に合格したことと同じ位強力なブランドになる。テーマ自由で講演会を開こうとなった時、講演者の人選においても、候補に上がりやすい。

私は、民間企業、自治体の両方において、障害者枠で採用されたが、自治体に採用された時は多くの聴覚障害者から「障害者枠で採用されたのか」とよく尋ねられた。
私の能力が軽んじられていたからなのか?民間企業からの転職が珍しかったからなのか?今となっては分からないが、うんざりするほど尋ねられたのは事実だ。
採用試験に障害者枠を設けているところであれば、民間企業、自治体のどちらにおいても、身体障害者採用試験は一般向けの採用試験に比べて競争倍率が少し低く採用基準が緩やかな傾向にある。
そのことから、一般枠で採用された聴覚障害者が「自分はいかに優秀であるか」を誇示したがる心理、障害者枠で採用された人を軽蔑する心理は想像できなくはない。

採用された後の業務内容は、私が見聞きした範囲でいえば、民間企業と自治体では異なるように思う。
障害者枠であっても、民間企業総合職で採用された場合、昇進昇格につながる仕事を任されることはあるかもしれないが、一般事務職の場合は、そのようなことは皆無ではないか。
私自身、民間企業で過ごした6年間は昇格できなかった。
健聴者は一般事務職であっても最高ランク(係長)まで昇格している人はいたので、その人達を見る限り、地味と思われる仕事をこなしつつ、何事も臨機応変に対応でき秘書的な役割を果たせる人が一般事務職としては昇格しやすいのではないかと考えている。
逆に、自治体は、障害者枠、一般枠のどちらで採用されてもあまり差はないように思う。
電話対応ができるかが大きなポイントになる。
障害があっても、聴こえて視力もあって手先が器用に使える人であれば、幅広い仕事の経験を積める。
分かりやすい例が、下肢障害者だ。
私の知っている下肢障害者は学校事務のスペシャリストと評価されている。
これは、長年様々な事務を経験した上に、様々な教員や管理職との人脈を築き、多くの学校に関する情報に精通しているからだ。
学校事務の大規模な改革では、事務効率化の功労者としても評価された。
その人も、障害者枠で採用された職員。
私は今、育児休業中で自治体内部の情報にアクセスできない状態なので、その人が出世しているのかどうかは分からないが、出世するに相応しい職員であると考えている。
(生意気かもしれないが、民間企業、自治体のどちらにおいても、仕事ぶりからして出世するだろうと思った人達は全員が上位職位に昇進昇格しているので、その人もいつかは昇進昇格すると信じている。)

聴覚障害者はキャリアプランが描きにくい。
高学歴イコール仕事面で優秀、に直結するわけではないが、長年、「一流大卒という肩書を手に入れ、一般枠で採用されれば、ある程度昇格しやすい。高い給料がもらえる。」という価値観が多くの人に身に染み付いているように思う。
だからこそ、一般枠が上で障害者枠が下という価値観で、仕事に関するあらゆることが語られる傾向にあるが、先述した例のように、どちらの枠で採用されようが、自分に合った仕事を長年継続できて、さらに昇進昇格できれば御の字だと考える。

故に、一般枠、障害者枠のどちらで採用されたかに関心を持つのは意味がないことだけは強調しておきたい。
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